「おーい、琴音ー!」
土曜。
この健の嬉しそうな顔。
あたしは結局、健の誘いに乗った。
裏道へ入っていくと、
ライブハウスの前にはすでに人だかりができていた。
何やら色んな張り紙や落書きだらけの地下階段を降りていく。
薄暗い照明。
独特のこもった匂い。
心臓に響くベース音。
「1ドリンクだけど、何がいい?」
「オレンジ」
「オッケー。待ってて」
小さいライブハウスはすぐに人で一杯になった。
始まる前から、がちゃがちゃと煩くて、さらに箱一杯の人たちの心の声が重なり合って、耳鳴りがとまらなくて、あたしは息苦しかった。
結局、
一曲目の途中で気持ち悪くなって、しゃがみこんでしまった。