―…
「なぁ、琴。
最近よく一緒にいる奴、誰?」
健があたしの前の席に逆向きに座って、問いかけた。
「別に友達だよ」
あたしは厄介そうに次の授業の教科書を机に出す。
健は全然納得いってない感じで、「ふーん」と頷いた。
「あ、じゃあさ、土曜ひま?」
「何で?」
「ライブ見に行かない?」
「何の?」
「軽音のOBの先輩が大学の軽音サークルでライブするんだって。
駅の裏道に、ライブハウスあるだろ?チケット買わされちゃって。付き合ってよ」
「えー」
「いいじゃん、タダでいいから!な?」
ライブかぁ、あんまり興味ないけど…。
健の、平然を装ってるけど、
本当はドキドキしてること、断られるのを恐れていること、
そんな声はあたしには筒抜けだから、断るわけにもいかなかった。