「というわけで、自転車が今日はないので乗せて」
「何であたしが…」
隠れてたつもりだったんだけど、
陽介はあたしの存在に気付いていたらしい。
全部見てたでしょ?とでもいう風にかわいこぶって笑った。
さっきの木崎って奴もそうだけど、
陽介にそう言われちゃな、みたいな雰囲気があった気がした。
不思議。
こいつが人に好かれて、慕われる理由は何だろう?
人をひきつける理由。
人との距離が近いから?
壁をつくらず、親身になってくれるから?
人を素直に慕って、親身になることが、
慕われて、好かれることに繋がってるってこと?
だとしたら、
あたしは本気で心から人を慕ったことなんてあっただろうか?
思わず自分に問いかけた。
いつだって深入りしないように、深入りしないようにしてきたんだ。
傷つかない代わりに、深い関係になれない。
それがあたしだ。
こいつは、陽介は、
傷つくことなんて恐れないんだ。
いつだって、恐れずに誰かに向かい合っている。