『みーい。』
優しい声。あたしはあれからみぃと呼ばれ、今は彼の腕の中にいる。暖かくて力強い。
お腹をくすぐってきては笑う、笑った八重歯が可愛い。そんな日常が今のあたしには充分すぎるくらい幸せだった。
21歳、アパレル社員ーー
あたしは、みぃ。
本当の名前なんか知らない。思い出せないから、あなたに名前をもらった。
母親と父親がいたのは覚えてる。
でもそれ以上は知らない。
というより興味ない。
今日は三日ぶりの彼との再会。彼宅でいちゃいちゃしたり、一緒にご飯を作ったり、それを二人で食べたり。
『みぃ、また腕あげたね。うまいよ。』
そうやっていつもいつも褒めてくれて、彼には怒る感情がないんじゃないかってくらい、優しい。
そんな紳士的な彼の名前は、らい。