殴りかかってくるが、オレも椎名も余裕で交わす。それが癪に触ったのか更に怒らせてくる。
「余所見すんな。」
「悪い。」
葛城を気にかけながら相手をする椎名の隙を、主犯者は狙ってきた。それをオレが止める。
「変な仮面取ったらどうだ?」
「断る。」
不意に隣の気配が止まる。不審に思って振り返ろうとしたら、下に引っ張られた。
「お前も、余所見すんなよ。」
今まで頭のあったところに拳が飛ぶ。礼を言おうと椎名を見ると腹を押さえていた。
「どうした!?」
「ちょっと油断した。大丈夫。」
鳩尾に食らったらしい。オレは立ち上がって殴りかかった。
「いい加減にやめといたら?このくらいに……」
「友也っ!」
……最後まで言わせてくれ頼む。
ってそんな場合ではないらしい。葛城の居る方向を見ると、まあ派手にやられてる。椎名も少し動揺してるみたいだ。互いに互いが人質のようで、下手に逆らえないのか。
なら、オレが。
「余所見してんな阿呆。」
クリーンヒット。流血沙汰は嫌いなので(一応生徒会だし)鳩尾を狙う。暫くした椎名は落ち着いたのか、立ち上がるとオレと共に反撃を始めた。
「葛城、遠慮するな。俺が許してやるから。」
「ほんまですか?なら遠慮なく。」
にっこり笑うと、葛城は容赦なく隣の奴を殴った。
……笑顔が椎名と似てるのは気の所為、だよな?
引きつる、味方なのに顔が引きつりそうだよ。
「俺が弱いわけあらへんやろ?人質なんていただけないやんな。」
初めて聞くような低い声に似つかない可愛らしい笑顔で、葛城は脅した。
「やばい……」
主犯者の焦りの声に、内心爆笑。