「お客さんが来てたんやな。会長は未だなのか?」
「はい、もう少しで来そうですけど。」
「悪いね、待たせて。」
葛城はさっと立ち上がると、再び笑顔で言った。
「俺、お茶入れてきますわ!」
「ありがとう。」
椎名は柔らかく笑った。
「美味しいんやで、友也の淹れるお茶。日本茶も紅茶も淹れるのが上手いねん。」
「そうなんですか。」
「楽にして待っててな。俺仕事してるけど、何かあったら話しかけてもええし。」
そう言って椎名はオレに背を向けた。カタカタとキーボードを鳴らす。白くて長い指が、流れるようにキー上を動いた。

その姿を見ていたオレの前に、葛城がお茶を置いた。
「ふふ、新垣さんも見惚れてはりますね?」
爆笑を堪えてるような表情でオレに問いかけた。むっとした声で訂正しておく。
「そんなわけないだろう。」
「そうですか、残念やな。」
なんで、と言おうとしたら、椎名に先を越されてしまった。
「何か知らんけど傷付いたわー」
ケラケラと明るく笑っている。全然傷付いた感じじゃないだろうが。
オレがその明るさに怯んでいると、生徒会室のドアが開いた。