生徒会会長に言われて行った先の生徒会室に居たのは、疲れた顔で眠っている生徒会会計の人だった。


襟足は軽く結んである艶やかな赤混じりの黒髪に、透き通るような白い肌。窮屈そうに折り畳まれた、細身で長身な身体。赤い小さな唇、そして長い睫毛は、噂になるほどな切れ長の目を隠していて。
椎名椋(しいなりょう)というこの男、そう言えば同じ生徒会メンバーのオレの幼なじみが好きだと言っていたような。友達も何人か言っていた。
頭は良い、ルックスも良い、性格も良し、方言フェチ(女性に多い)にとっては嬉しい関西弁というオプション付き。真面目に見えて、実は面白い上に優しいなんてそんな、とんだ紳士だ。
でもオレは、胡散臭いと思った。話したことは無かったが、すれ違ったときの笑顔が胡散臭かった。
そりゃあモテるよ、コイツみたいに作ってたらさ。

「あ、椎名さん寝てはるんですか?」
後ろから入ってきたのは、生徒会書記の葛城友也(かつらぎゆうや)。唯一の高校一年生メンバーだ。
明るめの茶髪にいくつかのピアス、一見すると不良に見えるが全然違う。かなり礼儀のなっている後輩だ。彼も結構整った顔をしていて、割と今どきな感じで京都出身らしい。そして椎名を尊敬していて、よく一緒にいる。
「新垣先輩がどんな用事なんですか?」
オレの名前は新垣隼(にいがきしゅん)。何にも属さない、部活にも入らないという超暇人だ。
「生徒会長に言われてな。」
「生徒会長もうすぐで来はると思いますよ。」
彼はにっこり笑うと、椎名を起こしにかかった。
「椎名さん、起きて下さい。後少しだけやってしまいましょう。」
「ん、おはよう、友也。俺、どれくらい寝てた?」
「20分だけですよ。」
そっか、と疲れたように笑うと、椎名はこっちを見た。眉間に若干の皺が寄る。