馬鹿じゃないの?地味で目立たなくて、きゃっきゃしてる友達の居ない私にそんなことしたら、他の女の子の視線が痛いじゃない。
私が彼にチョコを渡してから一カ月後のイベント。日本が作った下らない、私の嫌いな日。
「ねえ、良い?」漫画みたいな呼び掛け方。視線痛い、痛いから早く出ようよ。私は悪いことしてないからね?
「どうしたの?」私から渡しといてちょっと迷惑そうな顔で返事する。とりあえず教室から離れて特別教室へ。でも女の子たちの一部はそこら辺に隠れて聞いてるんでしょ、きっと。
「こないだはチョコありがとう。凄い凝ってて美味しかったよ。料理得意なんだ?」ああ、意外だった?女の子らしくないと思ってたんだ。
「それは良かった。料理好きだよ。」なんだかんだで会話出来ちゃう自分凄い。緊張するかと思ったら意外に違ったみたい。
「そっか、それなら下手すぎて不味いかもしれないな。でも受け取ってくれる?」何それ女の子。彼が差し出したのは、可愛らしくラッピングされた箱。一瞬でお返しのチョコだなって分かるわ。私のより可愛いじゃない。
「ありがとう。でもどうして……?」
「好き、なんです。」馬鹿じゃないの?何で私なんか。嬉しい、でも嫉妬が辛いわよね。
「ありがとう。」本命だもの、拒否する理由があるかしら?
宜しくね、って右手を差し出せば、パッと明るく笑った彼がその手を握った。
ラッピングを解いて、綺麗に形作られたチョコを、ほいと口に入れる。甘い味が口いっぱいに広がって、この告白が現実味を増した。
「美味しい。」
「良かった。」彼の顔を覗き見たら、思わず照れてしまうような笑顔。これが現実なんだって、舌の上に残るチョコの味に感謝した。

「好き、」
「え?」
「このチョコが。」
「なんだよ。」
笑い合う。告白とチョコのお返しに驚いたから、ちょっとだけ仕返し。