「竹村 りょう!」



ドアを開けた主は
教室いっぱいに響き渡る、
決して高くはないが
よく通る声で
私のフルネームを叫んだ。

…男だ


机につっぷしながら
地元の友達にせっせと
メールの返信をしていた私は
その大声に反応して
びくっと肩を震わせた


誰だ?
この学校で
あたしに用事がある奴なんて…


…いるわけねぇだろ

皆あたしのこと避けてんのに

目も合わそうとしなければ
口もきこうとしねぇ連中ばっか


近づけばバカの病気が
うつるとでも思ってんのか?

なんでもかんでも
見た目で判断してんじゃねぇよ

そんな偏狭な奴ら
こっちから願い下げだ!!!


そんなわけだから
好き好んで、
しかも教室入るや否や
あたしの名前を叫び散らす人間は
あたしにとって珍客中の珍客


どこのどいつだ

この竹村りょう様が
その面拝んでやろうじゃない


…なんて、
心の中でおどけてみせて
机から顔を上げ
顔にかかった髪の毛を
長い爪ですくように掻き上げ
その得体の知れない男が
立っているとおぼしきドアの方を
ゆっくり見やった