「哲となにかあった?」


ふたりだけの空間に律さんの声が響く。


律さんはなっちゃん同様、わたしと上原くんが本物の恋人じゃないことを知っている。


もちろん上原くんが由香里さんを好きなことも。


わたしは先ほどと同様に律さんに昨日の出来事を話した。


「そっか…。アイツに唯ちゃんを紹介したのは唯ちゃんが良い子だって自信を持って言えるから。だけど唯ちゃんが辛いなら止めてもいいんだよ?」


それって、上原くんと別れるってこと?


「哲の由香里大好きなのは今に始まったことじゃないからね」


「由香里さんは上原くんの気持ちに気付いてるんですか?」


「ううん、あの子鈍感だから。哲の気持ちを知ってるのは仲間内でわたしだけ。いろいろ相談に乗ってたからね」


律さんはコーヒーのおかわりをそっとわたしの前に差し出した。


「でも由香里は哲の気持ちに気付かず充と付き合いはじめてさ。それから哲、いろんな子と遊ぶようになって。ほら、あの顔でしょ?何もしなくても女が寄ってくるのに更に女遊びが激しくなっちゃって」


わたしの知る前の上原くん。


なんだか想像が出来ないや。


「でも唯ちゃんと付き合いはじめてから女遊びがぴたりと止んで。良い傾向だと思ってる。哲の友達としてお礼を言わせて。ありがとう、唯ちゃん」


「そんなっ!わたしは上原くんに無理やり付き合ってもらってるだけです。それに、由香里さんのことを好きな上原くんも含め好きなんです」


そう、上原くんが由香里さんに向ける優しい瞳に惹かれたのだ。


その瞳が自分に向けられないのは辛いけど、その瞳を近くで見れるだけで充分。