ハァとため息をつきながらフロアにモップをかける。


コツンと頭になにかあたったと思ったら金井さんがメニュー表を持って立っていた。


「日下さん、仕事中。フロアに出るときは明るい顔で、な?」

「すみません」


ヤバい、そうだった。


働いてるんだから、仕事に集中しなきゃ。


ピークも過ぎ去り最後のお客さまが帰ったあと金井さんがミルクティーを入れてくれた。


「んで?イケメン彼氏と何かあった?」


「なんでですか?」


「日下さんがため息つくときって大抵彼氏と何かあったときだろ?」


バイトの先輩だからか話やすいからか、金井さんにはいろいろ話してる。


といっても彼氏に他に好きな女性がいるんです、なんてことまでは言ってないけど。


昨日のやりとりを説明すると今度は金井さんは呆れたようにため息をついた。


「バカだな。男っていうのは余裕っていうの?心狭いところを見せたくないんだよ」


たぶん本物の彼氏ならそうなんだろうけど、上原くんはそうじゃないから。