冷蔵庫からケーキを出して、マスター直伝のミルクティーを入れる。


「あっ、ルブルムのケーキだ。ここのケーキ旨いんだよね」


「うん、今日なっちゃんと行ってきたんだ。上原くん、ここのチーズケーキ好きでしょ?お土産に買ってきたんだ」


ありがとう、と言うと上原くんはフォークにケーキを刺した。


よし、言うなら今しかない!


「そっ、そのケーキ食べてるときに男の人から声かけられたんだ!」


ウソも方便だとなっちゃんは言っていたけどやはり作り話だからか声が少し動揺してる気がする。


「……ふーん。そうなんだ」


あれ?


上原くんはさも興味がないようにケーキを口に運ぶ。


「それで?」


「それでって?」


「だから、その後どうなったの?」


まさかの切り返しに「なっちゃんが追い払ってくれた」としか言えなくて。


そしてまたどうってことないように「そっか」とだけ呟いてケーキを食べていく。


なっちゃん。やっぱり上原くんはヤキモチなんて妬かないよ。


はぁ、こんなことならやらなきゃよかった。


脈ナシってことを本人から突きつけられたようなものだもの。


きっとこれが由香里さんなら上原くんはヤキモチ妬くんだろうな。


「悪い、ちょっと用事思い出したから今夜は帰るよ」


「えっ、うん。わかった」


じゃあ、とわたしの頭をポンと触るとシトラスの香りを残して上原くんは帰っていった。