「それって不毛な恋だよ」


彼女は坦々とした口調でそう言うと眉間に皺を寄せた。


「でも、好きなんだもん」


「良いように扱われてるだけじゃん。やっぱり殴っていいかな?上原のこと」


指をポキポキと鳴らす彼女は見た目はスレンダーなのに小さな頃からしている柔道のせいかそこらの男の人より遥かに強い。


「なっちゃんの気持ちは嬉しいけど、わたしはそれで幸せなの」


わたしと上原くんが本物の恋人ではないことを知っている数少ない友人の一人、藤堂 夏樹。


幼稚園から大学まで、奇跡的にずっと同じクラスでわたしの全てを理解してくれているわたしの幼なじみだ。


「唯がそう言うならあたしからは何も言わないけど、辛いことがあったら言いなさい」


「ありがとう、なっちゃん」


なっちゃんの優しさにまた涙が出そうになる。


「でもさっきの話だけど、上原、メアド教えてくれって言った相手に怒ってたんでしょ?それってやっぱりヤキモチだと思うんだけどな」


「そんなんじゃないよ。由香里さんが杉田くんと一緒にいたからだよ」


「じゃあ試しに今日上原にこう言ってごらん。知らない男にナンパされたって」


「ナンパって…。実際にされてないよ?」


「ウソも方便!それで少しでもヤキモチ妬くような素振り出したら脈アリってことよ」


上原くんにそんなこと通じるのかな?と思いつつ今夜上原くんが泊まりにくるから試してみることにした。


今日の夕飯は鯵の炊き込みご飯に鶏大根と金平ゴボウとお味噌。


和食が好きな上原くんの好物ばかりにしてみた。


美味しそうにパクパク箸を進めてる上原くんにいつ言おうかとタイミングを見計らう。


結局、食事中は言えず食後のデザートを出すタイミングに言おう決めた。