講義が終わって校門前で上原くんを待っていると知らない男の人に話しかけられた。


おとなしそうな感じで、おそらくテンションとか価値観とかはわたしに似てるんだろうなって思った。


「あのっ、日下さん。友達になってほしいんだけど…」


いきなり声をかけられて友達になってほしいと言われたのは初めてでどう返事をしていいのか困ってしまう。


「メアッメアドだけでもいいし」


あまりの必死さにまぁメアドの交換だけならいいかなと携帯を取り出した。


「唯、何してんの?」


声が聞こえた方を振り向くと上原くんが立っていた。


「上原くん。今この人が友達になンッ」


なろう、って言われたんだよと伝えようとした瞬間上原くんに抱きしめられて視界が遮られた。


「あんた、誰?」


さきほどの男の人に向けられた言葉はわたしが今まで聞いたことのないような怖い声。


「ねぇ…。この状況、見てわかんない?」


イライラとした口調でそう告げたあと、男の人が走り去っていく音が聞こえた。


なんで上原くん、こんなに怒ってるんだろう?
っていうか、


「上原くん!苦しい!苦しいです!」


ずっと彼の腕に閉じ込められて息苦しくなったわたしは訴えるように軽く胸を叩いた。


「あっ…。悪い」


素っ気なくそういうとわたしを解放した上原くん。


辺りを見渡すとやはりさっきまでいた男の人はいなくなっていた。


なんで上原くん、あんなに怒ってるんだろう。


まさか、ヤキモチ?


そんな自分に都合の良いように解釈したけどすぐにそうじゃないってわかった。


「よっ!ご両人!ラブラブだねぇ」


「由香里、煽るな。哲はからかうと面倒になる」


今のやりとりをどこから見ていたのか、由香里さんと由香里さんの彼氏で上原くんの親友の杉田 充くんがニヤニヤした顔をしてこっちを見ていた。


だから、か。


ヤキモチでイライラしてたんじゃない。


この二人が一緒にいるからだ。


この二人が一緒にいるとこを見るのが嫌いだから、


本当は二人とも大好きなのに、嫉妬してしまう自分にイライラしてるんだろう。