「だから...」

「もういいよ」


俺は話を遮って、咲を抱きしめた。きゃしゃな体と今にも崩れ落ちそうな姿勢を支えた。



苦しんだ時間は多分同じくらいだと思う。だからこそ咲が何を言おうとしているかがわかった。



「...好きだよ」

「..うん。俺も」


二人は唇を合わせた。お互い唇が乾いていたのを確認すると、顔を見合わせて笑った。俺は多分この顔が見たかったんだ。



そのとき咲は“泣き笑い”という、なんだか不思議で、俺が見てきた中で一番綺麗な顔をしていた。




満月と無数に散らばる星が二人を照らしてくれている。






そんな気がした。