「...しかったから」


「え...?」


「嬉しかったから...泣いちゃう..かも.しれないから」


聞き間違いじゃないかと疑った。そのまま彼女は唇を離して話しだした。



「観覧車で木村君に相談したんだ。和人のこと」


大貴の残念そうな顔が頭に浮かぶ。




「前から言おうと思ってたけど、その度に和人は私をからかうし、今朝だって。もうこの関係のままでいいかなって。そしたら夏樹が和人に告白するって」




段々落ち着きを取り戻してきて、俺は夜の暗さを確認することができた。



「怖くなって...、不安だった。応援したかったけど、心の奥で失敗を期待していたんだ。最低だよ私。木村君は“人間ってそんなもんだし、なにより逃げてばっかじゃ駄目だ”だって」





大貴はいつか俺に言ったような台詞を咲に伝えていた。


やるじゃん。自称モテ男。