「ごめん...」


凍りついたような時間が一気に溶けていく。それとほぼ同時に、火照っていた体の体温が急降下する。



聞きたくなかった言葉。俺が臆病だった理由。でも、これが俺の精一杯。


顔を見ることができなかった。観覧車での夏樹ちゃんがそうであったように。




「や...そういう意味じゃ..なくて」



言葉に詰まる彼女。

なんで詰まるんだ?



いや、そんなことより俺はその声の震えに驚いた。



俺はおそるおそる顔を上げた。瞳には涙ぐむ彼女が映っていた。


なんで?


なんで泣いてんの?


泣きたいのはこっちだよ。


「俺、何かした?」


そう訊かずにはいられなかった。すると咲は首を横に振った。