しばらく風に当たっていた直人は何かを思い出したように真澄へと振り向いた。


「そういえば真澄、今日はどうしたの?」
今日、真澄に呼ばれた理由を聞く。


「今、夏休みでしょ? だから明日どこかに行こうと思って……
明日って大丈夫?」


「明日は聖(ひじり)との約束もないし、大丈夫だよ」


直人が口に出した、聖とは、親友の山戸聖。
彼とは高校で一緒になってすぐに親友と呼べる間柄になった。


「やった! なら明日お母さんと三人でショッピング行こ!」


真澄は嬉しそうにはしゃいでいるが、直人は少し顔がひきつっている。

その時、短いノックと共に部屋のドアが開いた。


「こらこら…… 真澄、直人君を荷物持ちにさせる気ね」


「正解~!」


「大丈夫ですよ。慣れてるんで」


「ごめんねえ直人君。なら、お願いするわね」


直人の言葉に、すぐに笑顔になり、手に持っていた焼きたてのクッキーをテーブルに置いた。