「愛ちゃ~んっ!」



愛の元へ駆け寄ると、案の定愛は最強に機嫌の悪い顔をしている。


「佐野連れてきてないでしょ~ね?」

「あ、当たり前じゃんかっ!暁羅から逃げてきたんだもんっ」

「それなら良かった!あいつ、しつこ過ぎるからさ~…」

とまた普段のような明るい表情に戻る愛。



よ、良かった~!
てっきりあたしに怒ってるのかと思っちゃった!




「麗奈、今日帰り笹岡待つの?」

「あ、その事なんだけどね?お願いがあるんだぁ~…」

「な、何?…」


愛は体をビクッとさせながら、怪訝そうにあたしを見つめる。



「もう!そんな怪しまなくっても普通だからー!」

「え?あ、また一緒に待ってよう?とかだと思ってた」

「ちっがーう!今日はその逆!一緒に帰ろ?」



「い、一緒に?…いいけど、途中までしか無理だよ?」

「わかってるよ!彼氏との約束あるんだよねー」

「まぁね~…。でも…麗奈は可哀想だね?」

と、ニヤリと笑う愛。

な、な…なんですか!
その妖しい笑みは!



「え…?な、何がよ?」



あたしがそう聞き返すと、愛はあたしに近寄ってきて耳元で…








「せっかく笹岡と付き合ったのに全然恋人らしい事出来なくて…」



と言った。



「ひ、ひどーいっ!あたし叫心が部活頑張ってるならそれだけで十分なんだからっ!」



あたしが必死にそう言うと、愛は呆れたように笑って

「はいはーい」



そう言って自分の席についた。



そして、愛が席に着いた瞬間に、授業開始を知らせるチャイムが教室中に鳴り響いた。