…ドンッ!!…



廊下を無我夢中で走っていると、誰かに肩がぶつかった。



「…いったぁ…」

「っ…!!ごめんなさっ……」


謝ろうとして、顔を見た瞬間。
あたしの頭の中は真っ白になった。


そこには、ちょっと機嫌の悪そうな長塚さんが立っていた。




「…高橋さん」

「な、…長…つ…かさ…」



長塚さんを見ると、あの日の放課後。

叫心と抱きあっていた場面が蘇ってくる。


あたしはその鮮明な記憶に惑わされながら、長塚さんをただ見つめる。




「…ちょうど良かった。高橋さんに、話しあるんだよね~」

と、笑ってはいるが、心のそこからは笑っていないその笑顔。


「……何…?」


あたしはただ、見つめる事しか出来ない。
逆に目を離す事が出来ない。




「…笹岡君の事本気なの?」

「…本気…だけど…、…でも…」




もう叫心の心はあなたのものなんでしょ?
何でそんな事聞くの?




「…遊びなんじゃないの?」

「え?」

「高橋さんって軽そうだし。」


長塚さんは、フンっと鼻で笑う。


「…軽いって…何で?高校入って付き合ったの暁羅だけだし…」

「佐野と付き合うとことか、まじ軽すぎー!」



な、何で?!


…どうしてそんな事っ…言われなきゃダメなのっ…?


「だいたい、笹岡君だって迷惑がってたし…」





…え?叫心が…?


そんな事言ってたの…?


「ほんとよ、ほんと!あいつしつこいって…」
「もうっ、や、めてよっ…!」


ちゃんと、叫心にお別れも言って。離れる決心だってついた。

もう邪魔しないから、ほっといてよ。
ただ想うだけ。邪魔はしないから、ずっとずっと叫心を好きでいさせてよ…!