「あ、おいっ!」
急に叫心に呼ばれたのは
ちょうど、教室を出た時だった。
「き、叫‥心…」
「ちょうどよかった。話あんだ」
叫心は少し駆け足であたしに近寄る。
「は…なし?」
ドクンと胸は高鳴る。
叫心の言うその"話"っていうのは、だいたい予想がつくから。
「お、おう。…てか、何かあったのかよ?」
「え?」
「な、何かすげえ震えてんぞ?」
叫心に核心に触れられ、あたしの身体はさらに震えあがる。だけど、こんなときに叫心を頼っちゃいけない。だめなんだ。あたしは、叫心頼っちゃ…。
「…そっ、そんな事ないよ?!」
あたしが、出来るだけ元気に見せながら否定すると、叫心はまだ疑いの目をあたしに向けたまま、首を傾げる。
「そうか?…いつもみたいに元気ねえぞ?」
"いつもみたいに"
…ねぇ、叫心?
たったそれだけの言葉で、あたしは嫌がらせに耐えれるくらい救われるの。胸が、安心して暖かくなるの…。
あたしの元気の源は叫心の言葉。
何があったかなんか、すぐ忘れちゃうんだ。
叫心は気付いてくれるんだね。あたしの異変に。叫心はそうやって、あたしの気持ちを膨らますんだ。
「…叫心ってほんと優しい…」
あたしは、涙が出そうになるのを必死にこらえて、声を絞り出した。
「…?!いい、いきなり何だよっ?!」
「っ、…今まで迷惑だった?」
あたしはゆっくりと言葉を口から出す。早口で話すと、涙が溢れそうだ。
「は?!…迷惑?」
急なあたしの言葉に叫心は首を傾ける。
「しつこくて嫌だった?」
「しつこい……?お前、一体何の話…」
「あたしの事、嫌いだった?!」
段々声は震えて、荒々しくなる。足は既にすくんでガクガクしていて、今にも腰が抜けそうだった。
「お前、いい加減にしろ。何言ってんだよ?」
叫心は少し眉間にしわを寄せて、あたしに詰め寄る。
だけど、あたしも負けじと言い返す。
一番言いたくなかった言葉を。
「‥叫心の好きな人って…、長塚さん…でしょ…?」