「……おま…ッ…、下手スギ……!」
あたしがボールを蹴り始めてすぐ、叫心はお腹を抱えて笑い始めた。
「叫心!?笑わないでよ~…!」
ボールはさっきから一回蹴る度、あたしから離れる。叫心みたいに上手く続かない。叫心の真似して蹴っても、ボールはあっちやこっちに転がっていくばかり…。
うぅ~…!
な、何か全然きまらない…。ここで、出来たりなんかしたら…好感度アップだったのに…!!!
「真上にあげるんだよ」
叫心はそう言って、ボールを軽々しく蹴りあげる。
あたしは、ボールの蹴り方とかそっちのけで、叫心のその姿にうっとりしていた。
「…お前、何その顔…」
「へ!?」
「すんげぇ、ブサイク」
「ひっ…ひどーいっ!叫心にときめいてたのに…!」
"ときめいてた"
そう言った瞬間、叫心はガタガタっと地面にコケる。
しかも、顔は真っ赤。
「叫心、大丈夫…?」
「うっ、うるせぇ!…コケただけだよっ」
コケただけって…、何で何もないとこでコケるんですか…?
「叫心、可愛いっ!」
叫心の前にあたしもしゃがんでそう言うと、叫心は
"ばーかっ"
と言って立ち上がった。
「笹岡くんっ!部活始まるよ~!」
楽しい時間もあっという間。
すぐ現実に引き戻された。
長塚さんの声で。
「…じゃあ、俺行くわ!!」
叫心は、ボールを蹴りながら戻って行った。
「あ~あ…。行っちゃった…」
「狙った獲物は逃がすなよ」
あたしが戻ってくると同時に愛はポツリとそう言った。
…そんなの無理だよ。
あたし、叫心の何でもないんだもん。
叫心を独り占めできるのは
"彼女"だけ。
…そうなんだから…