玲さんに連れられてきた場所は、あたしと玲さんが初めて出会ってお茶をした、あの喫茶店。
前に来たときと、相変わらずのお店の雰囲気で何故か心が安心した。
「今日は俺が奢るから!ケーキでも、パフェでも何でも食べて?」
「えぇ!?」
玲さんはニコニコと、メニューをあたしの目の前で開けながらそう言ってくれるけど…、なかなか気が進まない。
こうして、あたしのために時間を削ってくれてることも…すごく悪いと思うし。
「あ、ほんと気にしないでください」
「いやいや!俺が気にする!こんな可愛い女の子には、奢りたくなっちゃう!」
「いやだな、もう…!玲さんは、ほんとにお世辞上手なんですね!」
「え!?お世辞!?…悪いけど、俺…お世辞は今まで一言も言ったことないよ!?」
「え!?」
いや、ウソだと思うけど。
うん、確実にウソであってほしいけど。
ちょっと玲さんの意外な面を知って、驚いた。
「じゃあ…あんまり好みじゃない人には…」
「もちろん!直接ブサイクって伝えてあげるよ?」
………。
ひゅるりー…と、風が吹き通る。
だって…だって…!まず直接ってとこに疑問だし、それにそれに!伝えてあげるよって…何!?
「もちろん、可愛い女の子にも可愛いって言うよ?麗奈ちゃんだって、そうだしね!」
「……あり、がとう…ございます…」
と、ここはお礼を言うところなのだろうか?
よく分からなかったのだけど、玲さんが褒めてくれているというのは分かったので、とりあえず頭を下げ、お礼を伝えた。