「…、あ、そー。ていうか、早く行こうよ」


叫心にそういわれて、明らかに機嫌が悪くなった真実さん。

しかも、言葉は叫心に向けて言われていても、目線はあたしを見てる。

凍るような視線で。


「…、先行ってて」


叫心にまたそういわれて、真実さんはぶーと言いながら、部員達のほうへと向かっていった。



「麗奈、何か…ごめんな?」

「え?」

「すげー、嫌な思いさせてるよな?」

「あ、ううん。全然平気だよ?」

「…ほんとに?」

「当たり前じゃんか」


無理矢理笑顔作って、あたしは精一杯強がってみせる。

だけど、ほんとはズタボロ。
前までは叫心さえいてくれれば、あたしは強くいられる…なんて思ってたけど。

今はそうじゃないみたい。
少し離れてただけで、すごく距離を感じてしまう。



「麗奈、無理してない?」

「してないよー!あ、ほら!早く行かなくていいの?」

「…、あ…うん」


一瞬だけど、叫心の顔が曇った気がする。
あー、もうダメじゃん。あたし。

叫心に暗い顔させてどうすんの?
あたしが叫心を支えてなきゃダメなのに。


「ほんとに大丈夫だから…」



といって、立ち上がって言った瞬間だった。




ちゅっ…、と軽く唇に何かが触れた。



「…!!」

「離れてた分の、充電」


ははっと笑いながら、叫心はそう言った。





叫心、やっぱり最高。


叫心が傍にいてくれさえすれば。
こうやってあたしに笑いかけてさえくれば、もう無敵なの。




「頑張ってね!」

「っ!、おうっ…」



お返しというように、あたしも少し背伸びして口付ける。



叫心は、赤く染まった頬を押さえながら少し駆け足で部員達の方へと向かって行った。