とうとう運命の放課後がやってきた。
結局、あたしは叫心に今日部活を見るということを言わないままグランドへと降りた。


長塚さんにはあの後もずっと励まされていたけど、全然元気なんか出ない。

だけど、まず女の子が男子サッカー部に入ろうだなんておかしいと思う。

この学校の先生が許すはずがない。



あたしは、ぼーっとしながらサッカー部の練習が始まるのをひたすら待つ。




｢あれ、麗奈？｣

｢！｣


後ろから声をかけられて、あたしはすぐにそれが誰だかわかり、振り返る。



｢叫心！｣

｢なんだ、今日待っててくれるの？｣

｢あ、うん！｣


なんだって、何だ？なんだってー！


いつもなら絶対気にならない小さなことまで気になって、ひとりでイライラしてしまう。


｢叫心、待ってよ！｣

｢おー、悪い｣


後ろから駆け寄ってきた真実さんは叫心の腕に抱きつく。


こらこらー、いくら帰国子女だからって…！
ここは日本です！彼女の前でそんな大胆なスキンシップはいけません！


…なんて、言えるわけもなくあたしはその二人を見つめることしか出来ない。



｢あれ、れ……さんだっけ？｣

｢…｣


ちょっとちょっとー！
名前、言えてないし、ごまかさないでよ！


｢真実、麗奈だよ！今朝に紹介しただろ？｣

｢そだっけ？ごめんね、忘れっぽいから…｣


そう言って笑顔で謝ってくれる真美さん。
やっぱり勘違いかもしれない。だって、すごく自然な笑みだもん。

思い過ごしかもしれないよね。



｢でも、何でグランドに？｣

｢え、あ…えっと…｣

｢誰か、サッカー部に好きな人でもいるの？｣

｢…？｣


とりあえず、混乱。
だって、今朝叫心があたしのこと彼女だって紹介したよね？


混乱しすぎて、何も言えないでいると




｢真実、麗奈は俺の彼女だからさ。いつもこうやって応援してくれてるんだよ｣



そう、少し強めの口調で真実さんに言ってくれた。