「じゃ、今日は部活見て帰るってこと?」
「うん、そうだよ」
小林君の問いに、笑顔でそう答えるとすごく気まずそうに笑われた。
あたしが何かおかしなことでも言ったのだろうか。
「別に、大丈夫だと思うけど…」
「…え?」
「今日、真実も部活にくるんだ」
「ええ?」
「見学というか…、部活するらしい…」
ほんとびっくりだよなー、と言いながら小林君は笑う。
いやいや、ちょっと待ってくださいよ?
女の子ですよね、真実さんって。
なのに、どうしてサッカー部に見学にくるのかな。
その時、不意にさっきのクラスメイトたちが噂していた言葉を思い出した。
"サッカー上手いらしいよ!"
え…、え?
もしかして…、真実さんはサッカー部に入部するつもり…?
そんなあたしの心の中を読んだのか、小林君はまた苦笑い。
だーかーらー!変に隠すんじゃなくて、はっきり言ってほしいよ…。
「いや、真美さ。…その…スポーツ全般に何でもできるんだ」
「…」
「特にサッカーは…プロ級というか…」
「……」
もう開いた口が閉じません。
一体どういうことですか、サッカーがプロ並に上手だなんて。
女の子のあたしには信じられません。
「雄大よりは、上手よね」
「ば、ばっか!それ言うなよ!」
「あんたも現実見なさいよ!今日の朝練で十分分かったでしょ!」
長塚さんの痛い言葉に、小林君はうわーと言って頭を抱える。
「麗奈ちゃん、覚悟して部活見なきゃ…ね」
あたしはただ唖然として、長塚さんのその言葉を聞いていた。