「で、ここに来たっていうわけ?」

「う…、はい…」


長塚さんの冷たい視線を痛いくらいに浴びながら、あたしはご飯を口に運ぶ。


「ま、きっと真実の奴も今日だけだと思うからさ!」

「…そうだと、いいけどなぁ…」


小林君がフォローしてくれてるのもすごく分かる。だけど、やっぱり嫌だよ。

ひと時でも、叫心と離れていたくない。



「でも、何であんたと笹岡君とあの子はそんなに仲良いの?」

「あー…、中学から一緒だからな」

口をもぐもぐさせながら、小林君はそう言う。
中学からって、きっとすごい絆でもあるんだろうなぁ…と思いながら、あたしも再びご飯を口に運ぶ。


いつもはおいしいはずのご飯が、今日は全くと言っていいほど味を感じない。

叫心がいないだけで、こんなにも違うだなんて…本当に自分が情けなさ過ぎて笑えてくる。



「どうして今更転入?」

「何か親の都合で海外行ってたんだ。多分また仕事上の関係こっちに戻ってきたんだと思う」

「…あの整った顔に、あの抜群のスタイル。それに、帰国子女ときましたか…」


ははは、と苦笑いしながら長塚さんはあたしを見る。
その目はまるであたしに勝ち目がないんじゃない?と言いたそうだ。


「だーかーらー!まだ真実さんが叫心を好きだなんて、分からないじゃん!」

「今日、あんたと笹岡君が一緒にご飯食べてないことで立証されたじゃない!」

「うっ…」


今一番気にしてることを言わないでよぉ…。
しかも長塚さん絶対キャラ変わった気がする。

前はもっと女の子みたいな感じだったのに、今はまるで男友達みたいな感じ。


「いいもん、お昼くらい。帰りは叫心と帰るんだから」




あたしは、そう言ってご飯をこれ以上入らないってくらいまで頬張った。