「あれは、絶対笹岡君狙いね」
叫心達を見えなくなるまで見送ったあと、長塚さんはポツリと呟いた。いや、その声の低さからしてボソリと言ったほうが良いだろう。
「え?そうかなー。ただの友達みたいだったよ?」
「は!?あんた、見たでしょ?あたしと麗奈ちゃんに対する接し方の違い!」
確かに。
あたしに対する態度はすごく冷たく感じた。
だけど、それはきっと緊張してるからかもしれないし…人見知りから来るものかもしれないし。
あたしが嫌いだと裏付ける決定的な証拠があるわけじゃない。
「あれが狙ってる男とそうでない男の彼女に対する違いかー。悪魔な女だね!」
「…」
「くっそー、雄大もナメられたもんね!あれでも結構かっこいいのに!」
「…」
長塚さん、それ小林君のこと褒めてるって言っていいのかな?
あたしと長塚さんはそのまま会話をしながら教室へと戻っていく。
そして、教室の中へと入ってみるとさっきいた真美さんの噂でいっぱいだった。
『朝、チラっと見たんだけどね!あの転入生サッカー上手かったよー!』
『あたしも見た見たー!』
『小林君より上手じゃなかった?』
『うんうん!すごく上手だったー!』
と、次々に真実かどうかもわからない噂を話し合うクラスメイト達。
そんなクラスメイトたちに向かって長塚さんは机を思いっきり蹴った。
すると、その机の蹴られた音と長塚さんの気迫にクラスメイトたちは驚いてソロソロと逃げていった。
「ただの噂だよー!」
そう言ってフォローしながら、長塚さんの肩をポンっと叩く。
くるっと振り返った長塚さんは、妖しく笑っていた。
「雄大をフォローしたのよ!」
「え!?じゃ…ほんとに…!?」
あたしが驚きながらそう尋ねると、長塚さんはあたしの質問に答えるわけでもなく
またあの妖しい笑みを浮かべながら、自分の席へと向かっていった。