ピピー!!!
長かった試合の終わりの合図が、叫心がゴールをしたのと同時に体育館に鳴り響いた。
「…はぁ…はぁ…」
叫心は、額にかいた汗を服で思いっきりぬぐう。肩で大きく息をしていて、表情からはかなりつらそうに見える。
「…暁羅…、勝負ついたな」
「叫心…」
暁羅にそっと近づく叫心。暁羅もだいぶ疲れたのか、体育館に座り込んでいる。
「ち…ちくしょっ…」
暁羅は、悔しそうに地面に顔を伏せる。
バスケのことに関してはかなりプライドが高かった暁羅。サッカーをしている叫心に負けたのがよっぽど悔しかったのだろう。
さっきから顔をあげない。
「…暁羅…お疲れ…。そして、叫心も…」
あたしはそっと二人に近づく。
「なんだよ。二人して俺を笑いにきたのかよ」
鼻で笑う暁羅。だけど、絶対あたし達とは目を合わそうとしない。
「…あたし、暁羅が本気だったなんて…思ってなかったよ」
これはほんとの気持ち。あの遊んでばかりの暁羅が、こんなに必死になってあたしを必要としてくれた。
もし、この暁羅があの時。あの付き合っていた時にいたらあたし達は今日まで続いていたかもしれない。
「…っ本気なんかじゃねぇよ!!」
暁羅は、抱えていたボールを思いっきり投げ捨てた。
だけど、行動とは裏腹に身体はすごく震えている。負けたのが悔しいのか、それとも泣くのを堪えてるのか。
どちらにしても、あたしにはわからないのだけど。
今、この一瞬だけは暁羅のこと…見直した。あの時本気だったと今更だけど、そう思えることがあたしは幸せ。
暁羅にとってそうじゃなくても、あの時あたしは幸せ…だったんだ。だからこそ、嬉しいの。
悲しかったけど、幸せだったの。
そして、舌打ちをしてあたし達にその顔を見せることなく、体育館を後にした。