「お、叫心のやつ勝負にでたな」
小林君の言うとおり、叫心はさっきまでとはまったく違う手つきでボールを扱っている。
なんで?
叫心って何でこんなに何でも出来るの?こんなすごい人が…本当にあたしの彼氏でいいのかな…?
ヘタレ?
誰が言ったの、そんな事。
叫心は十分かっこいいじゃない。今、こうしてあたしだけのために、こんなフェアじゃない試合をあんなに必死に戦ってくれてる。
それだけでもう満足だよ!
あたしは必死に暁羅のあのガードから抜ける叫心の姿をただ必死に眺める。
「高橋、絶対目ぇつぶんなよ?」
小林君の楽しそうな顔。それにすっごく自信のある顔。
「もちろん!」
あたしも負けずに自信満々に笑いかける。
そしてとうとうラストが近づいた時、暁羅から抜けた叫心はバスケットゴールに向かって走り出す。
コートの外からは大きな声援。
だけど、今は叫心がボールをつく音しか聞こえない。ううん。叫心の音しか聞こえないの。
「いっけー!!」
あたしも精一杯の声をだして、そう叫んだ。