「…やっと応援してくれた…」
あたしの声が届いたのか、叫心はボールをダムダムっとつきながら、あたしの方へと目を向けた。
「叫心!よそ見なんかして…んな余裕ねぇだろ?お前負けてんだぜ?」
「しかもボロ負け」
そう言って暁羅は抜いてみろよ。と言わんばかりに、オープンに構える。
叫心は暁羅に目を向け、再びあたしの方へと向いた。
「麗奈は渡さないから」
さっきとは違う、いつものあの暖かみのあるあの笑顔でそう言ってくれた。
「…叫心…」
こんな時に不謹慎だけど…鼻血出そうだよ!
だって…だって…!!…叫心かっこ良すぎなんだもんっ!
「でも…暁羅と点差はすっごくあるのに…どうする気なんだろ…」
あたしが高鳴る胸を抑えながらそう呟くと、隣りで小林君が微笑んだ。
「まぁまぁ。叫心の実力ナメんなよ?」
「…?」
小林君がそう言ったのとほぼ同時だった。
叫心は、さっきまでとは全く違う手つきでボールをつきはじめ、暁羅をあっという間に抜いた。
「え…!?さっきとは全然違う…!」
「だろ?」
小林君は自慢気に笑ってる。
これは…一体何が起こってるの?
目の前では叫心があの暁羅を抜いてゴールを次々と決めて行く。
叫心がゴールを決める度、暁羅は悔しそうに舌打ちをする。
「暁羅には悪いけどな、叫心サッカーの次にバスケはまじで上手いんだよ」
小林君はそう言うと、あたしに向かってピース。
「でも…、さっきとは本当に違う…」
「高橋の応援が遅いからだよー!叫心、あいつヘタレだからさ、好きな奴からの応援無いと、何もできねぇんだわ」
小林君は苦笑いを零す。
ヘタレ…?
ううん、全然違うよ。
叫心はやっぱりいつもあたしの王子様なんだ。いつも、あたしを助けてくれる。どんなに自分が辛くても、まずあたしを助けてくれる。
やっぱり本当の王子様なんだよ。
「きょーしーんっ!!一番かっこいいよー!!」
叫心のかっこよさに興奮して大声でそう叫ぶと、叫心はやっぱり顔を真っ赤にしてずっこけた。
…やっぱりこっちの叫心のが可愛いかも。