ピーっ!!!



試合開始の合図の笛が体育館に鳴り響いた。

涙を止めて体育館に入ると小林君が慌てた様子であたしに近寄ってきた。


「叫心応援しねぇの?!」

「…す、するよ!」

「だったら前行こーぜ!こんなところで話してる暇ないって!」


そう言って、小林君はあたしの腕を掴んで走り出した。

前へ行くと、叫心と暁羅の試合は更にヒートアップしていて。さらに緊迫した空気が。



「ねぇ小林君!…やっぱりこんな試合…おかしいよね…?」

「…おかしいって…?」

「だって…暁羅にとって有利すぎるよ…!」

「まぁね」

小林君は納得したように頷く。


「じゃ、やめさせないと…!!」

あたしがそう言うと、小林君は首を傾げた。


「何で?」

「何でって…」

小林君だって、おかしいって思ったんでしょ!?…なら、やめさせないと…!!なのに…何でって…どうして…!?

訳も分からず小林君の顔を見ていると、小林君はゆっくりため息をついた。


「…高橋もおかしくね?」

「え…?」

「…やっぱり、彼女なら今は応援するべきでしょ。声出して」

小林君のその言葉に、あたしの心臓はドキンっと大きく揺れた。


「男にしたらやっぱ大事な試合を止められるほど恥ずかしいもんはねぇと思うよ?」


そして小林君は、「ましてや彼女にね」と付け足した。


声出して応援…。
あたし、今まで何してた?何考えてた?…試合を止める事しか考えてなかった。


叫心を応援してる。それはもちろん。
でも、あたし…今は応援してなかった…。




「叫、心……ごめん…ごめんなさい…!!…あたし…」

全身脱力して、座り込んだあたしに、小林君は手を差し延べ



「まだ遅くねぇよ。叫心はこっからが強いんだぜ?」


そう言ってくれた。



そうだ。まだ試合は終わってない。


これからなんだ。
あたしが一番叫心を応援しないでどうするの!?



あたしはゆっくり立ち上がると、大きく息を吸い込んだ。そして、両手を頬に翳して大きな声で叫んだ。





「叫心ー!!頑張ってーっ!!!!」