「…叫心…」


休憩になった瞬間、体育館を飛び出した叫心を追いかけ、ゆっくりとあたしは近付く。


「…麗奈。…来てたんだ?」

「…当たり前じゃんか。叫心の事応援してるんだから」


あたしはゆっくりと叫心の前に座った。



「…そうは見えなかったけど」

そう呟いた叫心の顔は、暗くて冷たい。



「な、何で?…」

「…麗奈の声だけ、聞こえない」


叫心はゆっくりと、でも確かにあたしを真っ直ぐに見据えながらそう言った。






…あたしだって、応援してるのに。どうしてそんな事言うの?


昨日…あたしがあんな事言ったから?だから、怒ってるの…?



だけど、…だけどしょうがないじゃん。不安で不安でしょうがないんだもん。



いつ叫心があたしの事ウザイって言うのかなって思うと、不安で不安でしょうがないんだもん。





そう思うと悲しくなって、あたしは俯いたまま、自分の拳を握り締める。


だけど、涙は止まってくれない。絶対泣きたくないのに、涙は溢れるばかり。



「…俺、まじで最低だな」

「…え?」



涙を目に溜めたまま叫心を見上げると、叫心はゆっくりとあたしの目に溜まった涙を拭った。




「…どんなに恥ずかしい試合になっても、俺は最後まで諦めねぇから」




そう言うと、叫心は再び体育館へと戻って行った。