その時、試合中の暁羅と目が合った。
しかもちょうど叫心からボールを奪って、ゴールを決めたところ。
何ていうか…余裕の笑み。
…ずるい。やっぱり暁羅は最低。
叫心の得意なスポーツはサッカーだって知ってるくせに、わざとバスケを試合に選んだんだから。
こんな試合、フェアじゃないよ…!
怒りに任せて試合を止めに入ろうとすると、小林君があたしの腕を掴んで、それを阻止した。
「…何っ…、で…?」
「…男に恥じかかせんじゃねぇよ」
そう言った小林君の声は低く…暗い。
同時に昨日のあの叫心の表情が脳裏に蘇る。
でも、あたしのためにこんな最低な試合…してほしくないんだよ。
あたしの願いも虚しく、時間はただ過ぎていく。
叫心もポイントを入れ始めたけど、まだまだ暁羅には追い付かない。
それに、暁羅は長身。叫心のシュートも簡単に阻止されてしまう。
叫心…!
心の中でそう何度も名前を叫ぶが、叫心に届く事はない。
周りのギャラリーの声は、いとも簡単に叫心へと届くのに、あたしの声だけは叫心になかなか届かない。
声に出来ない。
そして、あたしの応援は届かないまま時間は流れて
叫心と暁羅は前半からかなりバテた様子で、最初の休憩を迎えた。