「聞いて聞いて!『みつや』って『光哉』って書くんだって」


「……今日あんまメール来ない。私、何か変な事送ったかなぁ?」


光哉とメールし始めて一週間。


「光哉ね、冬生まれなんだって。暑苦しい夏生まれの私とは逆……」


私の口から出る言葉は『光哉』になっていた。




毎日、決まった時間の電話。

【おはよう】から始まり【おやすみ】で終わる、光哉との日々に毎日笑ってる。


「菜々、最近楽しそうだよねー!アッちゃんの名前も菜々から聞かなくなったし」

居酒屋での和歌の言葉に、頭が真っ白になった。

「そ、うかな……?」

「そぉだよ。しかも『光哉』の話ばっかり!」

思わず、頬が緩んだ。

そんな自分に、更に頭が真っ白になった。





……あれ。









アッちゃんの事が……。






「和歌……私、アッちゃんの事」

「いいんじゃない?忘れてても」





忘れてた……?





あんなに愛した人を


毎日、一秒足りとも忘れるなんて事なかった人を……





私は……。



「菜々、前に進めたね。良かったじゃん!」

和歌は私より先に、私の気持ちを知っていた。

「でもっ……」

「完全に忘れた訳じゃないでしょ?ただ思い出に変わっただけ……じゃない?」





思い出……。



ポロ


ポロ



ポロ





頬に暖かい物が流れていた。

目の前が霞んで行く。



狂った様に零れてくる涙は……。

「よしよし。吹っ切れたね!……お疲れ様」

そう言って頭を撫でて来る和歌のせい。



そして



甘いピンクのアルコールのせいにして。



その日

甘酸っぱい涙を、止めどなく流した。