草を踏む音

涙で何も見えてないから、足元も危うい


「あのカブの写真見て、お前カブが不幸だったと思う?」

「うちに来なけりゃ、もっといい人に拾ってもらえて長生きできたかもしれない」

「あこの所に来てなきゃ、あのまま外で死んでただろ」


そんなの、わかんないじゃん……


「カブの世界は、お前が全てだよ
男同士だからわかる」


何それ


「だって、お前、カブのこと大好きじゃん
その気持ちがカブに伝わってないと思う?
カブのことを大好きなお前がする判断は、常にカブにとって最善の判断なんだよ」


そんなの、気休めだよ


「今回は体が弱くて長生きできなかったけど、がんばった分早く生まれ変われるよ
んで、絶対幸せになる」


「ホント?」


「今頃、ライダーとウルトラに新入りの洗礼でも受けてんじゃねえ?
カブは、末っ子根性でわがままだから、きっと鍛えられてるよ」


……かわいいじゃん


「まあでも、サリーにもたいがい鍛えられてたか」

「寂しくないかな」

「あのうるさいライダーがいるのに?」


……笑って、涙が少しましになった

視界が少しクリアになる

……ここ、どこ??

花壇に囲まれた一角

肩を抱かれているから、体をちょっと動かしただけでとよきの胸に顔を寄せられた


「ありがと」とぎゅっと抱きつくと

「ありがとうより、好きって言って」とあごを持ち上げられる



「……好き」



のセリフの恥ずかしさに俯いてしまう前に、とよきは優しくキスしてくれた