とよきはケータイをポケットに突っ込みながら言った

「知ってるんだろ?全部」

「全部……かどうかは知らないけど」

「なんで知ってるっていわねーの?」

「隠せてるつもりでいるんだろうなと思って」

「……お前こえーよ」

「今更」


とよきはなんだか、他の男と違うの

うまくいかないの

かわいこぶったり、すねてみせたり、ちょっと引いてみたり、はたまた押してみたり

駆け引きできないの

友達期間が長すぎて装えない

だから、とよきが一体アタシのどこが好きなのかもよくわかんない


アタシは、とよきのどこが好きだろう??

冷静にまわりを見てるとことか

強面なのに、動物にめっぽう弱いとか

アタシはプールで濡れるのがキライだけど、とよきはプールが大好き……とか??

……変な理由

顔なら顔!性格なら性格!みたい理由はないのかな


好き……じゃないのかな?


横に座っているとよきはまたケータイを見ている


好き?
キライ……じゃない


最近繰り返す堂々巡りの思考

ここまで自分がどうしたいのかわからなくなったことはない

物事はもっといつも単純で、自分が行くか行かないかどっちかなのに

分岐点でこんなに悩んだことははじめて


「よし、終わり」

ととよきがケータイをパタンととじた