父さんは刺身をあてに休日を満喫している

「みさきちゃんはすごいなあ
英語がペラペラで、きっと将来立派な女性になって、お金持ちの男性に見初められたりするんだろうなぁ」

「ええ~みさきちゃん、よその男のお嫁に行くの??
うちの三兄弟のどれかと結婚して本当の娘になってよ~」

と母さんはみさきにおちょこを差し出した


「……え?」


みさきは手の中にちょこんとおさまったおちょこを見て固まっている


「今年はお正月のおとそも口をつけずでしょ?
縁起物だから、ね」

……母さん、半年以上前に終わった正月の話??

みさきは「あ、じゃあ……あけましておめでとうございます」と一口分の日本酒を飲み干した


「で、次はひなまつりの甘酒分ね
縁起物だから、嫁に行き遅れるから」


再びおちょこに少しだけ入った日本酒をぐいっと飲み干すと「これで嫁に行き遅れへんかな?」とみさきは肩をすくめた


「でもよく考えたら行き遅れてもいいわね
そしたらうちの三兄弟のどれかと結婚してもいいなって気になるかもしれないもの」

みさきはお刺身を食べながらくすくす笑っている

「三兄弟の方がいやがるんじゃないですか??」

「まっさか、みさきちゃんがいない間に理一と龍一が何回みさきちゃんの事取り合ってケンカしてたか」


……ッッ!!!


一瞬ヒヤッとしたけど、みさきは冗談だと思って受け流している


「取り合ってじゃないか、理一が一方的に龍一にヤキモチやいてたのよね」

「母さん、もういいから」


日本酒が入って、テンションが高い母さんをいなす
もう、余計なこと言うなって思いを込めて


「へえ、理一がヤキモチやくようなことなんかあったっけ?」


みさきは龍一の顔を見て首を傾げた