「なんで殺されるんだよ
美人ってほめてんだろーが」

「たまに美人っぽいってのは褒め言葉なの?」

とあこがとよきに聞くと、とよきは「違うな」と短く答えた

あこが据わった目で俺を見ていると、とよきがボソリと「まあ、でも……」と話し出す


「諸岡みたいなのがタイプなら、あこも似た系統なんじゃねーの?
あこに手出したら、俺が殺すけど」


何回殺されるんだ、俺は


「あのね、俺のタイプはみさきじゃないよ?
みさきは好きだけど、タイプじゃないんだよ」

「「まだ言うか」」

カップルの声が揃う

「そりゃ外見はさやかみたいなのが好きなんだろうけど」

とあこは退屈なのかあくびをしている


「ナルも言ってただろ、サディストなお前は生意気な女を力づくで喘がせるのが好きだって」

とよきがそう言った瞬間、あこの手がスパーンといい音を立ててとよきの後頭部をスライドした


「力づくってなんだ力づくって!!この変態!!」


あこは一体俺ととよきどっちに怒ってるんだ


「……だから、顔だけじゃ付き合っていけないってよくわかったでしょ??」

あこは息を整えるようにそう言った

確かに、付き合って行くって……顔を見ているだけじゃない

「好きになった人がタイプなんだよ、きっと」とあこはうなずいた


おれはあこととよきを交互にみやって「さやかにさ……別れても友達でいようって言われた」というと、あこが意外そうに目を見開いた

「へえ、その辺サバサバしてるんだ」

「学校で一番仲のいい女友達にしてって」

「へえ……」とあこの顔が少し曇る

「あこちゃんにしてたみたいにって」

あこは眉を少しひそめて、完璧に黙ってしまった

「俺って、あこにどんな風に接してたっけ?」

「むしろ、言い合いばっかりしてたと思うけど」と、あこはまずそうな顔をした