バンドしてて、アタシの知らない世界をいっぱい知ってそうだから魅かれて付き合ったんだけど……

「やってらんねーって……荒くれてる時に、まい……ちゃんに告られて」

「まいちゃん……って、どこの子?」

「スイミングが一緒の子」

「ふ~ん」

「っつか、そんなことどーでもいいんだよ」


とよきに肩をつかまれると、また向き合う

自販機の青白い蛍光灯

妙に居心地が悪くてとよきの腕を振り払った、のに

その手がそのままアタシのこめかみにそっと触れる


「お前のタイプが俺じゃないことくらいわかってるんだよ」

「アタシのタイプって?」

「繊細な芸術家肌の美形だろ?」

「…………」

……そうなんだ、自分で意識したことなかった


戸惑ったようにとよきの指がアタシの視界の端に揺れている

それはゆっくりとアタシから遠ざかっていった


「俺は、音楽にお前への思いを乗せて歌うこともできねーし
お前の目見ながらラブソングとか歌えねーし」

「……バカにしてるでしょ」

「してねーよ、俺にはできないもん」

……できないもんって……


立ちっぱなしで話してるから、アタシは片足に体重を乗せると、反対の足で地面をコンコンと蹴った


「歌ったり、かっこいい口説き文句とかは言えないけど……
俺は絶対暴力なんか振るわないし、お前から別れを切り出させるようなこと絶対しない」


「もしね、殴られたのがモロだったら、仕返しに行ってた?」

「……諸岡だったら、理一かナルが行くんじゃねえ?」

……女に暴力を振るう男なんて女の敵だから

だから殴り返しに行ったんだと思ってた