息を詰めてしまっていて、唇が離れると酸素を欲して大きく息を吸った

乾いたのどに空気が触れて咳き込む

「何す……っ」

とぶん殴って責めたてようと思ったのに、くそ真面目な顔して「あこ」とか呼ぶから……

ブーツのかかとを揃えて真正面から「はい」と返事してしまった


「俺、小学生の頃からあこの事が……好きだった」

……そんなに前から……

え、でも。

「理一達と一緒になって、さやかさやかって騒いでたじゃん」

「……それは、お前がジョニーデップって言うのと一緒だろ」

一緒かな?

ん?
ちょっと待って

「でも、“まいまい”とか言う女の子いたよね?」

「まいまい?……なんだそ……っっ」


あ、顔色変わった


「お前、それどこの情報?」

「情報って……理一とナルがうちで話してるのを聞いただけだけど」

「あいつら……」

とよきはしばらく腕組みして考えた後、こちらを見た

「ずっと、好きなのは……あこだけだから」

「はい、誤魔化したー」


タイミングよく、道に捨てられたコンビニの袋が風に吹かれてザワザワとアタシの足元に近づいてきたから、それを拾うと近くの自販機の横にある空き缶入れに入れた


とよきが後を追ってくる


「それ、お前があの暴力男と付き合いだした頃の話だよ」

「え?」

「今まで学校の同級生とか、先輩とちょっと一緒に帰るくらいだけだったのに、突然あんな年上の男って……
なんか、本気だろーが」

中3の時、中学生に見えなかったアタシは当時高3だった“アイツ”に声を掛けられて……