「そういう意味じゃないって」

「ほらやっぱり理一と一緒
“そういうつもりで言ったんじゃない”って言えば許されると思ってる」


逃げるように歩き続けると、とよきが突然走ってアタシを追い越し目の前に立ちふさがった

ぶつかる寸前で足を止めたのに、伸びてきた腕に抱きすくめられて……おでこが彼の胸に押し当てられた


「もう他の男に取られたくないんだって
……今まで散々他の男と付き合ってるの見せられてきた俺の気持ちにもなれよ」


「うそ」


ムードもくそもない言葉が出る


「せっかく、やっと、二人なのに……なんでケンカ勃発すんだよ」

「それはとよきが悪い」

抱きしめられたままでも、減らず口は引っ込まない

「あー……それは、うん、悪かった
でも、マジでそういう意味じゃないから」


まばたきを数回すると、むしょうに恥ずかしくなってググッととよきの体を押し返す


「なんで!
だって、アタシ、他の男の前ではかわいく振舞えるけど、理一とナルととよきの前では一切可愛くなんかしないじゃん!」

「……だから、素のお前が好きだけど?」


…… す き ?


「可愛くない女が好きなの?」

「他の男の前で可愛くできんなら、俺の前でもしろよ
っつか、他の男の前では可愛くすんな」


……え?つまり可愛くするの?しないの?
テンパってきた


とよきは眉間に力を入れて「あのさー」とこっちを見る

「お前、俺のこと男だと思ったことある?」

「思ってるよ、女には見えないし」

とよきはますます眉を寄せた