「何かのセールス?」

と聞かれて「まあ、そんな感じ」とごまかすと、今度は怖い顔に変化する

「隠すなよ」

「隠してないけど……」

「何?何だって??」

……意外としつこいな

「……ギャンブルに勝ったんだって」

「は?」

「59万」

「へえ……すごいな、で、それが何?」

「その59万でアタシを買うって」

「あん??」

……しまった
言葉、間違えた

「おいしいものでも一緒に食べませんか?って、言われて」

「……へえ」

「断ったんだからいいじゃん」

なんでアタシが言い訳しなきゃいけないんだかって思っていると、とよきが「あーもう!」と横で頭をガシガシかいている

今まで付き合ってきた男みたいに、髪をセットして……ってタイプじゃないとよき

洗いざらしみたいな髪が、ぐしゃぐしゃになっていく

「俺が遅れなきゃ良かったんだよな、……ごめん」

長身の彼の頭のてっぺんに腕をのばして、もつれそうな髪を撫でて元に戻す

「外にいたから体冷えたんだけど……
中、入ろうよ」

とショッピングモールを指差した

入ってすぐの店頭にマフラーがたくさん並んでいる

「あったかそ……
こんなロングマフラーもかわいいね」

「どれ?」

「これ」

「お前に似合いそうだな」

と、とよきは手に取った