クリスマスイブに売春って……援助交際っていうと聞こえはマシか……

「……付き合うって?」

「あーーー……飯食って、飲んで、安いホテルなんかじゃなくて、スイートクラスの部屋で最後まで」

最後まで……ね

「それ、いくらあるの?」

「59万」

……すごい

目の前に立つ男の背後の横断歩道

赤信号でできた人だかり、車道の向こう側


「待ち合わせの相手が来た……
あの男、手が早いから行った方がいいと思うけど」

そう言うと相手は少し顔をゆがめて笑うと「残念でした」と次の獲物をゲットすべく去っていった

信号が青になるやいなや、誰よりも猛ダッシュで走ってきたとよき

どこから走り続けていたのか、アタシの目の前まで来ると、体を折り曲げてひざに手をつき肩で息をしている

ケータイを見ると、17:18

とよきは早めに来るような気がしてアタシが勝手に早く待ち合わせ場所に来ただけなんだけど、軽く45分は待ったことになる


「帰ったかと思った……」


息を切らしながら彼はそう言った

「別に、そんなに短気じゃないけど……
あんまり遅くなるなら、どっかの店にでも入って待つし」

「……ごめん」

「ワンオク、だっけ?聞いてたし」

とイヤホンを見せるととよきは最後に一つ深呼吸をして、アタシの横の壁にもたれかかった


「さっきここで誰かと話してなかった??」

……見えてたんだ

「ああ、うん……話しかけられて」

「なんて?」

「…………」

思わず黙ってしまうと、とよきがアタシの顔を覗き込んだ