「これは歌ってねーだろ、“エトセトラ”」

「俺が歌った」

「……とよきぃ」

「お前が来るのがおせーんだよ」


……ちょっとちょっと
とアタシは二人の会話に割り込んだ

「その、ワンオクとやらばっかり歌うつもり??」

「「そーだけど」」

と理一ととよきの声が重なって、アタシは何度かうなずくと諦めた

つまり、今、彼らの中にブームが到来しているって事

音楽の趣味が合うとか、凝りだすと異常にハマるところとか、そういうのがこの男達三人の仲良しの要因なのかもしれない


それにしても、歌の雰囲気とか……ロシアンブルーが歌うとかっこよさそ

と思い出に片足をつっこみかけた所で慌てて引き返す


ナルが一回歌った曲をもう一回入れるという理一の暴挙

数時間、彼らのワンオクカバーライブを聞かされて……

あと10分ですコールの後は、今イチオシの“アンサイズニア”のアンコール……


……誰の失恋カラオケなんだろ
むしろ彼らばっかりがストレス発散してる気がするんですけど

歌い終わって満足そうにナルと理一はMJを挟んで部屋を出て行く

大声の聞きっぱなしでクラクラする頭とおかしくなった耳でフラフラ立ち上がると、とよきに手を取られた


手のひらにipodを置かれて目が点になる


「ワンオクばっかり入ってるから、聞いてみれば?」

「あ、うん……ありがと」

つまり、次カラオケにくるまでに勉強しとけって事だよね

そのままポケットに入れて、かばんを取ろうとするとまた手を引かれる


「来週のクリスマスイブ、どーしてんの」