精密検査に異常はなくて、すぐ退院になったさやか

骨折したのは左手で、不便ではあるけれども利き手は動くからと次の日から学校に登校することになり、俺の日課に朝・夕の送り迎えが追加された

学校でも不自由なさやかにほとんどつきっきりで世話をしている


さやかの友達がやってきては「さやか、超愛されてるよね~」と冷やかしていき、彼女は笑って「デショー」なんて応じながら、薬指にはまるリングを大切そうに反対の手で包み込んだりしていた


はっきり言って、俺はビビってる

また彼女に別れを切り出して、同じような事が起こったらどうしようって

だから、穏便にことが運ぶように、自分の気持ちはひたすら隠してやり過ごす日々


さやかが一番仲良しの女子と三人で昼休みを過ごすようになって、とよきとナルとは久しくゆっくり話していない

「ほんと、キミら仲良しカップルだよね」

ショートカットで一部の男子に“上戸彩”に似てると人気のさやかの親友は、机に肘をつきながら紙パックのいちごオーレをすすってズルズルと音を立てた

俺は愛想笑いで、さやかは肩をすくめている

「みんな言ってるよ、さやかがうらやまし~って、彼氏超優しい~って」

……優しい??

「そうなんだって、理一くん」

さやかが俺を見て嬉しそうに笑うから、俺は「ハハ……」と頭をかいた