エレベーターホールにはもう理一の姿はなかった

……帰っちゃったか

ま、待っててもらう義理もないんだけど

拍子抜けしてボーっとエレベーターを待っていると「みさきちゃーん」と理一ママの明るい声がした

「今帰り??」

「はい」

「今日はごはんは?」

……しまった、コンビニ寄って帰るの忘れたッッ

たまごかけごはんでも食べるか……


「うちで食べない?」

「…………」

「遠慮しないでよ~
おいでおいで」


理一ママの明るい声に甘えてしまう

6階に到達して、「今日の晩御飯はもう下ごしらえできてるの、すぐできるからね」と理一ママの声を聞きながら玄関をくぐると、テレビの音が聞こえてきた

「お邪魔します」

リビングに入ると一人でテレビを見ていた弟が顔だけをこちらに向ける

「あれ?また来たの?」

「これ、失礼な言い方しないの!
お母さんが連れてきたんだから」

「ごめんね、また来ちゃいました
なあ、さっき理一帰ってけーへんかった?」

「帰ってけたよ」

……弟が変な関西弁を使う

「なんか怒ってて自分の部屋にこもってる」

……怒ってる?
さやかと何かあったんか???

「え~?理一機嫌悪いの~?
お母さん理一が機嫌悪いの苦手なのよね
モノに当たるでしょ?」

理一ママが言ったそばから、ガタンと物音がどこかの部屋から聞こえてきた