「質問は、終わり?」

アタシが聞くと、「終わり」と答える

「自分から、こうして女の子に近づくのは初めてで会話が続かないな」

「女は基本的に好きじゃないのに、なんで?」

「……外見が激しく好みで」

「外見かッ」

突っ込んでハハッて笑っても、国坂くんは笑っていない

「外見が好みで、中身を知りたいって思うのは普通だと思うけど」

……女慣れしてるのかしてないのか、わからん人やな

「俺の事も知って欲しいと思う」

向かい合って、ずばりそう言われるとめちゃくちゃ恥ずかしいんですけど
アタシはうなずくと、上目で相手の顔を盗み見た……はずなのに、バッチリ視線がぶつかる

国坂くんは、ぐーにした手を口に軽くあてて放心したようにこちらを見ていた

「あの、じゃあ……今日はこれで」

と言っても返事がこない

「あの?」

そう言って顔をのぞきこむと、驚いた様子で彼は一歩下がってしまった

???

「……すっげ……かわいい」


え???

え???

なんて答えたらいいのかわからなくて、立ち尽くしたまま

国坂くんも、そのまま止まってしまっている

この空気、どう流せば……と思ったまま現状打破できず


規則的にコンクリートに靴がこすれる音がして視線を横にうつすと、国坂くんの後ろから理一が現れた

理一もアタシも一瞬顔を見合わせたけれど、理一はすぐにそのまま歩いていってしまった

少し向こう側からオートロックを開錠する音がする

「あの、じゃ、アタシは……帰ります」

「あ、うん、またメールするから」

帰ろうと背中を向けると、腕を掴まれた

「今日はありがとう」と言うと、パッと手は離れていく

アタシは少し微笑んで、理一のあとを追うようにオートロックを開錠した