「だって、手紙渡して女口説くのが常套手段の人やったら困るやん」

「そういう意味か」

「どうゆう意味やと思ったん?」

国坂くんは一瞬黙ったあと、また質問をなげかけてきた

「スキな男のタイプは?」

「タイプ?うーん、なんやろ?……アタシの外見より中身をスキになってくれる人かな」

「もっと芸能人の名前とか言うと思ったのに」

「そう?……って、聞きたいことってこれ?」

「違う」

「何?じゃーまた差し支えのない質問したわけ??
本題に入らんと、もうマンション見えてきてるけど」

「……彼氏は?」

「……おったら、国坂くんとこうしてないな」

「じゃあ、スキな人は?」

「……おる
けど、その人とどうこうなることはないよ」

「…………」

マンションまではあともう少しだった

黙ってしまった国坂くんに逆質問する


「国坂くんのスキな女のタイプは?」

「女は基本的にあんまり好きじゃない」

「……おいおい」

「男に好かれようと自分を偽ったり、他を出し抜こうと踏み込んできたりする女は苦手」

「それ、めっちゃモテる男の発言やん」

国坂くんの顔をまじまじと見つめると、メガネの奥の切れ長の目はインテリチックで、口をとじてると無口っぽい表情は、悪くない
もしかしてこの人、けっこうモテる人?

「あれ、マンション」

すぐそばの建物を指差す

入り口の手前で立ち止まった