悠太はほんの少し驚きと照れの境界線の表情をした。


しかし、すぐに何かを企むような顔つきになった。



「…何、薫?俺を辱めようとしてる?」



―――――…ば、ばれてるっ?!



内心焦りながら、平然を装って薫は答えた。



「そ…そんなことないもん!」



悠太の笑みはさらにさも意味ありげな含み笑いを漏らした。



「ふーん?……でも、薫。それ逆効果。そんなことばっかり言うと、俺もっと薫を独占したくなっちゃうよ?理性とかも、外れちゃうよ?」



「…あたしも、悠太を独占したいよ―――――」




きっと悠太は歌手として今後も生きてゆくだろう。

しかし、それは薫にとっては辛いことなのだ。


悠太の人気はテレビでも、週刊誌でも取り上げられている。

それどころか、職場内でも度々話題になるのだ。


薫はその都度それとなく返事をしていたが、彼と入籍する以上、これからはそうはいかない気がする。



――――悠太を他の誰かが好きと言う。




そんな辛いことがあるだろうか。

そんな心配なことがあるだろうか。



悠太が芸能人と不倫をする…

それが、恐ろしい。



ありそうだから、余計に…――――。